抗菌薬の使い方 ― 研修医・医学生のためのおすすめ書籍
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はじめに
研修医になると、抗菌薬(抗生剤)の使い方を学ぶ必要が出てきます。
たとえば「肺炎ではこの抗菌薬」「尿路感染症ではこの抗菌薬」というように、感染症ごとに適切な薬を選ぶ判断が求められます。
この記事では、抗菌薬の使い方を理解し、臨床で自信を持って使えるようになるためのおすすめ書籍を紹介します。
医学生のうちは「概論」を押さえよう
医学生の段階では、抗菌薬の使い方を完璧に覚える必要はありません。
実際に臨床に出てから自然と身につく部分が多く、学生のうちにできることは基礎の理解です。
おすすめは以下の2冊です。
- 『イラストレイテッド薬理学』
薬剤の作用機序を、図解を通して理解できる定番の薬理学テキスト。 - 『イラストレイテッド微生物学』
細菌やウイルスなど、感染症の基礎となる微生物学の知識を身につけられます。
まずは、これらで「薬の効く仕組み」と「原因となる微生物」をざっくりと理解しておきましょう。
抗菌薬の考え方を体系的に学ぶなら
次に読むべきは、岩田健太郎先生の『抗菌薬の考え方、使い方』です。
この本は、医学生から研修医まで幅広く読まれており、抗菌薬の基本的な考え方から、実際の使用方法までを体系的に学ぶことができます。
- どんな感染症に、どの抗菌薬を使うのか
- なぜその薬を選ぶのか
- 抗菌薬の原理と臨床判断の考え方
といった内容を、臨床経験が少なくても理解できるよう丁寧に解説しています。
医学生のうちから読んでもまったく問題ありません。むしろ、早い段階で読んでおくと、臨床実習や研修に入ったときに大きな差がつきます。
実践的に使える参考書 ― サンフォード感染症治療ガイド
より実践的に抗菌薬を使いこなすための1冊が、『サンフォード感染症治療ガイド(Sanford Guide)』です。
世界中の感染症専門医が参照するスタンダードなガイドで、感染症ごとに推奨される抗菌薬が一覧化されています。
使い方に慣れるまで少し時間がかかりますが、慣れてくると非常に便利です。
特に以下のような点で役立ちます。
- 感染症ごとの推奨抗菌薬がすぐに引ける
- 腎機能障害時の投与量調整を確認できる
一方で、日本ではあまり見られない感染症の記載があったり、セフメタゾールなど日本独自の抗菌薬が載っていない点は注意が必要です。
日本の臨床現場に即した本 ― 感染症プラチナマニュアル
もう1冊のおすすめが、日本発の『感染症プラチナマニュアル』です。
私は研修医時代には使っていませんでしたが、後から読んで非常に実践的で読みやすいと感じました。
日本の臨床現場に即した内容で、主要な感染症の初期治療・検査・抗菌薬選択が簡潔にまとまっています。
「サンフォードだと少し使いづらい」と感じる方には、プラチナマニュアルがおすすめです。
まとめ
医学生のうちは抗菌薬の「理屈」を学び、研修医になったら「使い方」を実践的に身につけるのが理想的です。
- 医学生 → 『イラストレイテッド薬理学』『イラストレイテッド微生物学』
- 医学生・研修医 → 『抗菌薬の考え方、使い方』
- 研修医 → 『サンフォード感染症治療ガイド』『感染症プラチナマニュアル』
この順番で学べば、抗菌薬を「なんとなく使う」段階から、「考えて使う」段階へステップアップできます。
