内科診断力を鍛える ― 内科診断リファレンスのすすめ
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疾患名と症状を覚えるだけでは足りない
多くの医学生は、疾患を学ぶときに
「AAA疾患では、B・C・Dの症状がある」
というように疾患と症状を覚えていると思います。
しかし実際の臨床では、患者さんが「B・C・Dの症状を訴えている」場合に、それが本当にAAA疾患なのかどうかを判断しなければなりません。
当然ながら、症状が一致するからといってすぐに診断がつくわけではありません。
実際の現場では、典型的な所見で来る患者さんもいれば、非典型的でわかりにくいケース、さらには「不定愁訴」と呼ばれるような多彩な症状を示すケースも多くあります。
こうしたときにこそ、「症状・所見から疾患を考える力」=診断学が重要になります。
診断学のベースにおすすめ ― 『内科診断リファレンス』
そんなときに役立つのが、
『ジェネラリストのための内科診断リファレンス 第2版』(医学書院)です。
この本の特徴は、疾患ごとの症状や身体所見について、感度・特異度が明確に記載されている点です。
「その所見がどの程度診断に役立つのか」を数値で理解できるため、臨床推論の精度が一段と高まります。
私は医学生の高学年のときに少し読みましたが(通読はしていません)、本格的に使いこなすのは研修医になってからで十分だと思います。
救急外来でも病棟でも、自分が診た症例に当てはめながら読むと、知識がぐっと定着します。
他にも診断学の本はありますが、最初の一冊としては間違いなくこの本がベースになります。
分厚い診断学の本よりも「実例と照らして学ぶ」
学生の頃、私はとても分厚い診断学の教科書(タイトルは控えます)を読んだことがありますが、正直ほとんど身につきませんでした。
やはり診断学は、実際の症例と結びつけながら学ぶのが一番効率的です。
『内科診断リファレンス』は医学生でも十分に使えます。
5〜6年生くらいで「少し臨床推論を学びたい」という方には良い教材になるでしょう。
ただし、私の意見としては、もしその時間があるなら別の角度からの医学勉強(基礎医学中心の臨床医学を学ぶ)に使った方が、最終的な伸びしろは大きいと思います。
診断学にこだわりすぎないことも大切
診断学は確かに重要ですが、あくまで臨床医として必要な基礎スキルの一部です。
最低限の診断力を身につけたあとは、それ以上に時間をかける必要はあまりありません。
テレビ番組などで臨床推論が取り上げられることもありますが、私はそれを眺めていても得られるものは少ないと感じます。
限られた時間の中で、診断学以外にも
- 臨床研究
- 基礎研究
- 資産形成やキャリア設計
といった、あなたの将来を広げる分野に時間を使う方が、長期的に見てはるかに価値があるはずです。
まとめ
- 疾患名・症状を漠然と覚えるのではなく、「症状から考える」力を養うことが診断学の本質。
- 『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』は、感度・特異度を踏まえて診断推論を深められる良書。
- 医学生でも使えるが、本格的に活用するのは研修医以降で十分。
- 診断学に固執せず、臨床・研究・キャリアの全体像を見据えて学ぼう。
