輸液について

研修医になってまず多くの人が戸惑うのが「輸液」だと思います。
この患者にはどの輸液を使えばいいのか、どれくらいの量を、どのくらいのスピードで入れたらいいのか――最初は誰もが悩みます。

私自身、学生のころから輸液に興味があったので、あとで紹介する2冊の本を読みました。
研修医になりたての頃は、座学で得た知識と臨床現場での実際の感覚とのギャップに少し戸惑いましたが、すぐに慣れた記憶があります。

実際のところ、「勉強しておいて本当に役に立ったのか？」と言われると少し微妙ですが、初期研修の最初の時期を過ぎると、輸液の選択で困ることはほとんどなくなりました（もちろん、脱水と溢水の判断は今でも難しいです）。
ただ正直に言えば、本を読まなくても実臨床の中で自然と学べる部分も多いと思います。

それでも「最低限の知識だけは整理しておきたい」という方には、次の2冊をおすすめします。

1. 水・電解質と酸塩基平衡 (Short Seminars)
2. より理解を深める！体液電解質異常と輸液 改訂4版

他にも良い教材はありますが、まずはこの2冊で全体像をつかむのが良いと思います。その知識をベースに、疾患ごとにどのくらいの輸液をすべきかを、実際の症例ごとに学んでいけば十分です。

評価の方が100倍大事

輸液そのものの選択よりも、脱水か溢水かをどう評価するかを学ぶ方がはるかに重要です。
さまざまな指標がありますが、すべての所見が同じ方向に揃うことはほとんどありません。個々の所見だけを見るのではなく、全体像を把握して総合的に判断する力が求められます。

経験を積むうちに、「どの輸液を使っても大きくは変わらないのでは？」と思うこともあります。
実際、輸液に“絶対的な正解”はなく、よほど大きな間違いをしない限り、致命的な問題になることは稀です。
だからといって何も知らなくて良いわけではありません。大切なのは、今、患者の体の中で何が起こっているのか、そしてこれから何が起こりうるのかを常に考えることです。

そうした「病態を基盤に考える姿勢」を身につけるためにも、紹介した2冊の本は非常に良い教材です。
これらの知識は、初期研修を超えて、一生涯使える財産になると思います。

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@eurone2022